書評(抄録)・トピック

みんな「おひとりさま」

著者 上野千鶴子 著

書評

・・・前著を読んでいない人でも、現代日本が抱える高齢化社会の問題や、著者が提案する「個」を基本とした生き方の心構えについて、たくさんの情報と、考えるきっかけを得ることができるだろう。わたし自身、年金などのいわゆる「世代間格差」について漠然とした不満をいだいていたが、「高齢者にとって安心できる社会保障制度をつくることは、結果的にニート、フリーターにとってもプラス」といった指摘に大いに蒙を啓かれた。

 ――松永美穂 (早稲田大学教授) (朝日新聞、2012年12月16日)

・・・特に興味深いのは、インタビューを通じた著者(1948年生まれ)の自分史だ。学生運動で経験した男性への失望、そこで気づいた女性学/女友だちの重要性、両親の死を看取ることで得た死生観などが語られ、女性学と親/夫/子どもに頼らない(頼れない)「おひとりさま」というアイデアとのつながりがよく理解できる。・・・ 後半の世代論争では、社会学者としての著者の本領が遺憾なく発揮される。ライフスタイルの問題を超え、社会構造を通して「おひとりさま」をマクロな視点で眺め直すのに最適な一冊である。

 ――松岡瑛理 (週刊朝日、2013年3月29日)        

ポスト全体主義時代の民主主義

著者 ジャン=ピエール・ルゴフ 

訳者  渡名喜 庸哲(となき・ようてつ)
    中村督 (なかむら・ただし)

書評

・・・表立った「パニック」もなく、なんとなく「平静」を保っている日本という国の権力機構は、単一的な批判では批判しつくすことの出来ない奥行きとしたたかさを持っている。・・・一体この国は何なのだという疑問をあらためて問う必要がある。本書は、その意味で、多くの示唆をあたえる。

 ――粉川哲夫(図書新聞、2012年2月4日)        

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ポスト全体主義時代の民主主義

子どもが自立する学校

著者 尾木直樹 編著

書評

・・・「いま学校は、学校たりうるか!」。本書の八つの学校の実践記録は、読む者に強く問いかけます。公立 / 私立、中学校 / 高校・・・それぞれの立ち位置は異なりながら、共通するのは、編者が述べているように、「文化活動が“真の学力”を伸ばす」こと。縦の意思決定ラインが強まる学校の中で、新たな形を話し合い、模索しながら、つくりあげ、生み出された実践は、それだけでも≪奇跡≫です。・・・

 ――綿貫公平・中学校教員・全国進路指導研究会委員長 (しんぶん赤旗、2011年4月17日)        

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子どもが自立する学校 ~奇跡を生んだ実践の秘密

なぜ自爆攻撃なのか

著者 ファルハド・ホスロハヴァル

訳者 早良哲夫

書評

・・・単純にイスラームだから自爆攻撃なのではない。自爆攻撃者が、殉教者として来世での至福までもが約束されると信じられる背景には、イスラームの信仰とは直接に関係のないさまざまな要因のほか、圧倒的な軍事力を背景に内外に対して正当性を主張し確保してきた、近代国家に対する「反抗」という側面が無視できない。・・・国家のあり方を問い直す1冊でもある。。

 ――奥田敦・慶応大教授(北海道新聞、2011年8月21日)

       
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なぜ自爆攻撃なのか ― イスラムの新しい殉教者たち

北朝鮮「偉大な愛」の幻(上・下)

著者ブラッドレー・マーティン(ジャーナリスト)

訳者 朝倉和子 (翻訳家)

書評

金正日とはいったいどんな人物だったのか。北朝鮮に何度も足を運び、また膨大な数の亡命者や脱北者へのインタビューを試み、それらの生きた証言を建国以来の歴史の中に位置づけたジャーナリスト、ブラッドレー・マーティンの『北朝鮮「偉大な愛」の幻』は、金正日の実像を生き生きと伝えている。金正日は、無神経で残忍な暴君であるとともに、市場経済と共存するタイの王制に関心を寄せる改革者という両面性をそなえていた。しかし、結局、彼は慎重な日和見主義の域を出ることが出来ず、瀬戸際外交の果てに、軍を中心とする「先軍政治」へと舵を切ることになる。

それでは、なぜ、金正日は、核や弾道ミサイルなどの大量破壊兵器の放棄を決断できなかったのか。マーティンによれば、そこに立ちはだかっていたのは、信頼と検証の問題だった。北朝鮮をそこまで不信の塊にしたもの、それは、朝鮮戦争のトラウマだったのである。ナパーム弾をはじめとして60万トンもの爆弾の洗礼を受けた北朝鮮に刻みつけられた戦禍の記憶は、閉ざされた国家を準臨戦態勢へと押しやっていった。

 ――姜尚中・東京大学教授(朝日新聞、2012年1月15日)        

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北朝鮮 「偉大な愛」の幻 (上)
北朝鮮 「偉大な愛」の幻 (下)

毛沢東最後の革命 上・下

著者 ロデリック・マクファーカー /マイケル・シェーンハルス
訳者 朝倉和子

書評

北京市長彭真ら旧4人組の失脚から故毛沢東夫人紅青ら新4人組の駆逐にいたる、文字通り「文革10年の内乱史」である。とくに1967~68年の紅衛兵の暴力、大衆的赤色テロと報復の殺し合いがすさまじい。(中略)

本書の価値は、記述の殆(ほとん)どは実証された、信頼できるものだという点に尽きる。(中略)

日本の読者は本書で一番信頼できる文革通史に出会うことになる。

   ――「日本経済新聞」11年 2月 6日 毛里和子(早稲田大学名誉教授)

       
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毛沢東 最後の革命 下
毛沢東 最後の革命 上

ユーラシア漂泊

著者:小野寺誠

書評

・・・韓国から中国、中央アジア、イラン、コーカサス、トルコ、中欧と、老人の不条理で 過酷な旅が続いていく。・・・
自分の半生を恥じ、「年をとってますます希望から見放された」「人生の負け組」と 自嘲する著者。しかし、懸命に前に進むその一人旅に寄り添いながら、読む者は いつしか自分自身の人生を歩き抜く勇気と活力を得ていくのではないか。
最初の妻との離婚以来、22年間の断筆を破って書き下ろされた珠玉の旅行記。

   ――「聖教新聞」09年10月14日

孫をたずねて3ヶ月
陸路と船でヘルシンキまで 1冊に・・・
小野寺さんは<孤独の中で人生を考えられるのが旅。(きびしい境遇の人でも)『自分でもやれる』という気分になるんじゃないか>と話す。

   ――吉井亨「朝日新聞」09年9月11日  

・・・放浪記だが、これがなかなか読ませる。・・・年取った肉体はボロボロだというのである。じゃあ、そんな過酷な旅に出なけりゃいいじゃん、と言いたくなる。・・・おそらく旅嫌いの人間にはわからない魅力がそこにあるからだろう。そのバイタリティにひたすら感服するのである。  

   ――北上次郎「日刊ゲンダイ、北上次郎のこれが面白極上本だ!」09年7月31日

       

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ユーラシア漂泊

今夜も赤ちょうちん

著者:鈴木琢磨

書評

毎日新聞夕刊の好評コラムから厳選した79話。全国の庶民的な酒場の魅力を紹介する。

   ――サライ、2009年10月号

都内の居酒屋を巡り(というか徘徊し)、店の紹介だけに限らず、記者の仕事から知り合った、小説家や著名人達の酒の上での話しを織り込んでいる。そこがミソであり、他の居酒屋巡り本とは違う魅力のあるところ。何かと、飲兵衛は肩身がせまいが、本書を読んで大手を振って歩きたい。

   ――YOMIURI ONLINE 本よみうり堂、2009年9月10日

居酒屋巡りのかたちをとって森羅万象、世事一般、人間現象あれこれを随意に切り取り、判断し、定義し、倦むところがない。酒がどうだの肴がこうだの、利いたふうなことをのたもうて通ぶる池波正太郎の出来損ないみたいなのが後を絶たないが、鈴木琢磨はさにあらず、ひたすら「探訪」に徹するのだ。秋上がりする酒の、のどごしのような文章が並ぶ。

   ――河谷史夫氏(朝日新聞論説委員)、「選択」、2009年9月号

酒をたしなむ人もたしなまない人も居酒屋から発信される数々の物語に触れ、心に哀愁がわいてくるのではないだろうか。  

   ――公明新聞、2009年8月24日

ふらりと入った店でもさすがは名物記者、亭主に肴を任せ、居合わせた客と話を弾ませる。市井の人間ドラマもいいが、その店と縁のある著名人との思い出話も興味深い。これぞ大人の醍醐味。  

  ――Japan Press Network 47NEWS、2009年8月10日

汗と涙が染みたカウンター、素朴な美味、主人やおかみの人柄、客同士の一言二言。今は亡き大家・暉峻康隆氏の教えを胸に、皇居のお堀端勤めの新聞記者が赤ちょうちんめぐり。

   ――東京新聞、8月4日

       

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今夜も赤ちょうちん

英語力が飛躍するレッスン・書評

著者:今井康人

書評

・・・筆者が、1つの授業システムとしてこの「音読・暗写・多読」に学校全体で取り組み、大きな成果を上げてこられたことに心から敬意を表したい。
著者の英語教育に対する熱い想いもまたこの本を読むと痛いほど伝わってくる。この本が他に多くみられるような音読の単なる「How toもの」で終わらず、深い感銘を与えてくれる最大の理由は、私たちに「教師として大切なこと」をも同時に教えてくれるからであろう。・・・
生徒の学力を上げたいと思われるなら、同時に自分の授業力を上げたいと思われるならば、是非この本をお読みいただきたいと思う。・・・

  ――東谷保裕(立命館宇治中学・高校外国語科主任)、「英語教育」09年7月号

       

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英語力が飛躍するレッスン

英単語イメージハンドブック・書評

著者:大西泰斗/ポール・マクベイ

書評

英単語の核となるイメージを理解することで、無意味な暗記をせずに正しい用法が身につくことを教えてくれる。・・・基本単語を上手に使いこなすことが英語力の基盤になることが再認識できる。

           ――Asahi Weekly 2009年1月18日

・・・複数の著作に分散していた項目が、ダイジェストとしてではなく集大成の形で1冊にまとめられた本書の意義は大きい。この1冊をまさに「ハンドブック」としてつねに携えておくならば、他の著作はしばらく書棚に戻しておいてもよいだろう。

           ――石田秀雄(北海道教育大学釧路校教授)「英語教育」2009年3月

辞書だけではわかりにくい英語のニュアンスがまとめてあり、大西さんのエッセンスが詰まった1冊です。定番書が重視される語学書ですが、この本は当店で1ヵ月間売り上げトップを記録しています。

         ――南部輝実(ブックファースト新宿店)「朝日新聞」広告特集、2008年12月20日

       
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英単語イメージハンドブック

「よい子」が人を殺す

著者:尾木直樹

書評

・・・なぜ家庭内でよい子による殺人事件が頻発するのか。・・・本書を読んで、疑問が氷解した。立派な家庭だからこそ、子供による親の殺人事件が起きているのだ。

           ――森永卓郎(経済アナリスト)「毎日新聞」2008年9月12日

・・・著者は最近の家庭内殺人事件を分析し「砂のようにバラバラの状態でカプセルの中に詰め込まれた「カプセル家族」の危機と二極化する格差社会の深刻化」と指摘する。特に「よい子」たちが置かれている状況を考察、無差別殺人事件についても言及していく。 著者の提唱するのは広い視野に立ったキャリアデザイン教育。

           ――「新潟日報」2008年10月19日、ほか多数の地方紙

       
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「よい子」が人を殺す

人はなぜレイプするのか

著者:ランディ・ソーンヒル/クレイグ・パーマー

書評

レイプという不愉快な現象を進化生物学から見ると、どのように探求できるのか、そして、進化生物学から理解すると、レイプを防止するためにどのような提案ができるかを論じたものだ。本書の結論は暫定的なものだが、人間の行動を進化的に探求するための、ていねいな議論が展開されている。

            ――長谷川眞理子(総合研究大学院大学教授)「朝日新聞」2008年8月17日

       
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人はなぜレイプするのか

米国はいかにして世界経済を支配したか

著者:萩原伸次郎

書評

・・・覇権国家アメリカ弱体化の原因を明らかにするのが、いま世界経済の本質をとらえるには何よりも必要となっています。そのためにも戦後アメリカが資本主義経済を以下に支配してきたかのメカニズムを客観的に追求せねばなりません。本書はこの問題に真正面からとりくんでおり、時宜にかなったものといえます。・・・市場と国家権力との関係など深めてほしい論点もおおくありますが、現在の世界経済が直面している課題を理解するには欠かせない好著です。

             ――今宮謙二(中央大学名誉教授)「しんぶん赤旗」2008年9月14日

       
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米国はいかにして世界経済を支配したか

万葉集百歌

著者:古橋信孝/森朝男

書評

1970年代以降の万葉集研究を牽引してきた両雄が、真っ正面からぶつかりあって一首ずつの歌を読んでいく。歌を詠むことの楽しさと読みの多様性を、スリリングに味わわせてくれる。

              ――三浦佑之(千葉大学教授)「週刊読書人」2008年上半期の収穫から

・・・項目は叙景・季節・旅・恋・揶揄や笑いなど現代的感覚で分類され、歌本来のおもしろさと多彩さを深く味わえる。同じ歌をめぐる批評・鑑賞の相違と共振も刺激的だ。。

               ――「東京新聞」2008年7月13日

・・・選ばれた歌はどこかで出会ったことのあるものが多いが、付せられた二人の短文が歌の新鮮な魅力を掘り起こしていて、一首を、今、ここで歌われたかのように受けとめることができる。。

               ――長谷川宏(哲学者)「婦人之友」2009年2月18日1月

       
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万葉集百歌

日本人はどこまでバカになるのか

著者:尾木直樹

書評

今のやり方では本当の「学力」は低下し、日本はどんどん劣化していく。 どうすればいいのか?本書に用意されたヒントは、理想論であるようでいて本質を突いていて、私たち大人の市民力が問われる打開策だ。このままでは日本人は確実にバカになるぞ。

春日和夫、フリーライター「SAPIO」

       
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日本人はどこまでバカになるのか

遺伝子には何ができないか

著者:レニー・モス

書評

専門家でさえ、遺伝子を誤用していると本書は批判する。ひとつは、白い花、青い目、○○症、といった表象を決定するかのように言われる遺伝子。しかしそれらは遺伝子の存在によってではなく、欠損の帰結として生じる。しかも欠損は表象に直結せず、複雑な過程に左右される。・・・一方、タンパク質の規格を示すDNA配列としての遺伝子という言い方がある。二つの意味は時につぎはぎされ、時に混用される。議論はドーキンス批判にも及ぶ。難解ながら大変刺激的な論争の企てである。

福岡伸一(分子生物学者)「読売新聞」08年5月4日

       
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遺伝子には何ができないか

日本経済 見捨てられる私たち

著者:山家悠紀夫

書評

1990年代以降の経済社会における「常識」を、平易な文章と豊富な統計データのもとに検証し、単なる神話にすぎないことを解き明かしていく。・・・メッセージはいずれも正当である。ただ、このメッセージに応える有力政党が存在していない。そこに評者も含めて暗澹たる思いにかられるのである。

新藤宗幸(千葉大学教授)「週刊エコノミスト」08年4月15日

構造改革の本質は「企業の儲かる仕掛けづくり」だと著者は喝破する。・・・しかも、企業が儲かるようになった裏側で、一般家庭の所得が減り、格差も拡大した結果、国民生活は着実に困窮していった。だから著者は「構造改革の考え方は間違っていた」とはっきり述べているのだ。・・・そうした構造改革不況から脱出する方法についても著者は詳しく触れている。その説明も、分かりやすく、強い説得力がある。

森永卓郎(エコノミスト)「週刊ポスト」08年3月

いまのニッポンはこうなっている―とわかり易く答えてくれる本を見つけたぜ。「グローバル化・構造改革・小さな政府」という日本経済の三つの神話を解体し、いまのわれらのビンボーが「自己責任」の問題などではないことをキチンと説明している。読めば、チョット元気の出る本だ。

吉田 司(ノンフィクション作家)、「中日新聞」08年2月20日

構造改革とは「企業がもうかる経済構造への改革」だった。今後も、財政再建の旗印の下で「小さな政府」を目指す政策や消費税増税の追い打ちがかかり、暮らしは一段と厳しさを増す―。こうしたシビアな現状分析の末に、労働環境の整備や社会保障制度の再構築など「今とは違う日本の未来」に向けた政策を明快に提言。

「愛媛新聞」08年2月17日

私たちの暮らしが厳しくなったのは「グローバル化」のためというよりも、「構造改革」政策とその影響の方が大きいと著者は見る。

「週刊金曜日」編集部が選ぶ3冊、08年3月28日

本書は景気悪化、物価高騰などで生活不安に脅かされているおおくの国民にぜひ読んでもらいたい好著です。・・・日本経済の本当の姿を知るうえで優れた本です。

今宮謙二(中央大学名誉教授)、「しんぶん赤旗」08年3月16日

       
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北朝鮮「偉大な愛」の幻(上下)

著者:ブラッドレー・マーティン

朝倉和子訳

書評

本書は、世間をまどわすジャーナリストのお粗末な北朝鮮論とは、格段の違いを見せている。・・・

和田春樹(東大名誉教授) 「週刊読書人」2007年8月24日

なぜ、どうして、こういう国になったのか。・・・本著は、それを知るにふさわしい。上下二巻、読了に気力がいるが、分かりやすく面白い。まず、そこが凄い。・・・

久田恵(ノンフィクション作家) 「朝日新聞」2007年5月27日

在日経験も長い筆者が冒頭の「日本の読者へ」の中で訴えることばは我々日本人に重く響く。・・・

春原剛(日本経済新聞編集委員) 「日本経済新聞」2007年5月27日

       
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北朝鮮 「偉大な愛」の幻 (上)
北朝鮮 「偉大な愛」の幻 (下)

ポスト・デモクラシー

著者 コリン・クラウチ

山口二郎監修、近藤隆文訳

書評

英首相ブレアの「ニューレーバー」政策は企業からの支持を求めるあまり民営化や外部委託で公共サービスを商品化し、質を劣化させた。・・・市民であれば当然保持できる「権利としての公共サービス」という著者の考えは、日本でも十分傾聴に値する。

小林良彰(慶応大学教授) 「朝日新聞」

クラウチはこのような経済の危機が、そのまま「大企業の権力支配」という現代政治の危機になっていると警告する。ここには「格差」の問題の本質がある。・・・今日の危機的な「ポスト・デモクラシー」の状況を明確に暴いた本書は、そこに描かれていることが暗いものであるにもかかわらず、読者に一種のエネルギーを与えてくれる。

宇波彰(評論家)「公明新聞」

       
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ポスト・デモクラシー

自閉症の君は世界一の息子だ

著者 ポール・コリンズ(作家)

訳者 中尾真理

書評

・・・自分と異なる世界に生きる人をどう理解すればよいかという普遍的な問いが全編を貫いている。・・・父と息子がかすかに会話を交わし、希望を見いだすところで本書は終わる。感動的だが涙はない。・・・

最相葉月、ノンフィクション作家「朝日新聞」

「悲劇ではない。これがぼくの家族」と言い切る著者。物理学という世界に集中したニュートンを認めるならば、周囲にあるさまざまな物に執着し、列車の時刻表をそらんじる“ニュートン”も認めよう、ともいう。懸命にわが子という他者を理解しようとする姿勢が伝わる好著。成長と個性、幸福とは何か。社会の多様性について改めて考えさせられる。

大橋由香子、ノンフィクション作家「福井新聞」

       
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自閉症の君は世界一の息子だ

軍産複合体のアメリカ

戦争をやめられない理由

著書 宮田 律

書評

この本おすすめ。現在のブッシュ・アメリカを明快に「軍国主義国家」と言い切った市販本は(私の知る限り)はじめてだからだ。・・・これまで指摘されることが少なかった“軍産複合体の戦争”を熱烈支持している「草の根のアメリカ人」=福音主義のキリスト教右派とユダヤ資本(イスラエル・ロビー)の関係にスポットを当てているのも、すげぇ勉強になった。・・・

――吉田司、ノンフィクション作家「中日新聞」

世界「最強」の米軍をもってしても、自分たちの意思を他国民に押し付けることはできない。この真理が、これだけ明白になっているのに、なぜ米国は戦争をやめることができないのか。この問いへの答えの一つが、軍産複合体が今日の米国に及ぼす巨大な影響力です。・・・本書は、米国などでの最近の研究にもとづき、この問題を改めて解明したもの。・・・

――「しんぶん赤旗」

・・・軍産複合体を排除しない限り、「日本も米国の戦争に付き合い続けることになる」という警句は、対米追従を続ける日本に重く響く。

――「東京新聞」

・・・「イスラム世界を訪れて接する市井の人々の素朴な笑顔を思い浮かべると、彼らを犠牲にして、米国経済をうるおすために、戦争をすることがいいことだとは思えません」・・・

――「信濃毎日新聞、著者インタビュー」その他多数紙

       
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軍産複合体のアメリカ 

新・学歴社会がはじまる

分断される子どもたち

著者 尾木直樹

書評

・・・尾木氏が分析した結果分かってきたことは、教育にかかわるあらゆる部門、分野で、今、急速に格差が拡大してきているということでした。・・・この格差は、小泉前内閣をはじめとする、最近の新自由主義の経済、政治路線が生み出したものであることを尾木氏は強調します。・・・今こそ、この事実にしっかり向き合って、この路線と決別しなければ、子どもたちの悲劇は改善されるどころか、一層深刻になるだろうことを本書は説得力を持って示しています。・・・

――汐見稔幸・東京大学教授「しんぶん赤旗」

・・・著者はさまざまなデータと事例を用いて、格差拡大の現状を分析している。・・・著者の教育建て直しに関する政策提言は明確だ。弱肉強食の経済政策を見直し、習熟度別授業を廃止、学習内容の現場への権限委譲、手厚い義務教育への支援などだ。私も全面的に賛成だが、気になることは、これらがいまの政府の政策と正反対であることだ。

――森永卓郎(週刊ポスト06年12月22日)

       
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新・学歴社会がはじまる 

9条がつくる脱アメリカ国家

財界リーダーの提言

著者 品川正治

書評

立花隆「週刊文春、私の読書日記」

本書の白眉は、品川が京都三高時代、「軍人勅諭・読み替え事件」の顛末を語るシーン。・・・ヒトラー・ナチスドイツへの抵抗を呼びかけた有名な「白バラ運動」にも比すべき<軍国日本の白バラ事件>ではないか。このエピソードだけでも、本書を手にする価値がある。それだけでなく、北朝鮮の核実験から集団的自衛権行使に踏み込もうとしている安倍内閣のチェックにも役立つでしょう。・・・本書は「日本とアメリカは・・・基本的に価値観を共有している」と主張する安倍内閣「美しい国」の対極に立つ本だ。

──吉田 司(ダカーポ、2006年12月6日)

中国戦線から奇跡的に生還、復員船のなかで日本国憲法草案を読んだ体験はいまも鮮やかです。軍産複合体が国を牛耳るアメリカと、平和憲法のもとで歩んできた日本とは価値観が違うはずだと問い、9条のもとでの日本の国家目標を示しています。82歳。「持てる力をふりしぼって」発言を続ける姿勢に圧倒されます。

──しんぶん赤旗 日曜版、2006年12月12日号

       
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ナチと民族原理主義

著者 クローディア・クーンズ(デューク大学教授)

訳者 滝川 義人

キャロル・グラックさん(コロンビア大学教授)

本書は迫力ある画期的労作だ。ドイツ国民が実際に信じた民族原理主義に基づくユダヤ人排撃の道徳体系。単にナチの悪と片づけられない。それがいかにして当時の知的エリートらによっても構築されたかを、恐ろしいほどはっきりと解き明かしている。

書評

ナチの本質は、本書で明らかにされたような、余りにも凡庸な、大衆向けの疑似科学・哲学に彩られた、他民族を排除する民族原理主義であり、この思想は現代に至るまで、様々に形を変えて生き続けているはずである。

──三浦小太郎、諸君!

いかにしてホロコーストは可能となったのか。官僚や学者から教育者に至るまで、ナチ政権に荷担した人々の姿を描き出したナチ研究の傑作。本書が描き出す、良心の痛みを伴わず虐殺が行われるプロセスは、決して他人事ではない。

──坂野 徹、図書新聞2006年上半期読書アンケート

       
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ナチと民族原理主義

「うたかたの恋」の真実

ハプスブルク皇太子心中事件

著者 仲 晃

書評

皇太子の許されざる恋が死を選ばせた純愛物語というふうにこの事件は見られてきた。だがそれだけなのだろうか、という疑問から著者はこの事件の背景をたどり、単純なラブ・ストーリーではないことを明らかにしてゆく。それはハプスブルク帝国の滅亡に深く関わった,よりなまなましい人間ドラマなのだ。……〈うたかたの恋〉といったロマンティックなイメージでしか知られていなかったこの事件をあらためて歴史的に読み直す試みに、多くを教えられた。

──海野 弘(評論家)、日本経済新聞

本書は、この「マイヤーリング心中事件」の謎に深く切り込み、その「謎」によく迫ったばかりでなく、その考証をを通して、宮廷と社会、皇室と国家、個人と公人といった様々な問題を適切に投げかけてくれる快著といってよいだろう。……

──瀧田夏樹(東洋大学名誉教授)、週刊ポスト

坂を転げ落ちるように暗転するハプスブルク家の運命を描いたドキュメント。

──河北新報、ほか多数

       
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「うたかたの恋」の真実

歯はヒトの魂である

歯医者の知らない根本治療

著者 西原克成

有馬朗人さん(東京大学名誉教授、元文部科学大臣)

西原先生は名歯科医である。かつて私は、歯槽膿漏の末期で烈しい歯の痛みに悩まされた。こういう時、普通は抜歯するようだが、先生のていねいな治療で、ついに抜かずにすんだ。その方法はかなり独自のものであった。

渥美和彦さん(東京大学名誉教授、日本統合医療学会理事長)

西原克成さんは日本人離れしたスケールの大きな構想力の持ち主である。10年以上前に、セラミックスを使い、血流の流体力学エネルギーが筋肉細胞の遺伝子の引き金を引いて、骨芽細胞と血液細胞を誘導するという画期的手法を考案した。これによりハイブリッド型の人工骨髄造血器を開発して、日本人工臓器学会賞を受賞した。
その手法の一環である本書の人工歯根の開発は、これまで誰も思いつかなかった独創的な見事なもので、これからの歯科医療の飛躍を予感させる。

読者より

歯はこんなに大切なの、と思いました。口を全体からみる視点は、これまでの歯の本にはない視点です。岩波新書「歯の健康学」をこえた好著です。

──古田浩滋、公務員

西原先生の著作は、たいてい読んだので、その視点はほぼ分かったぞ、と思っていたところにこの本を知りました。またもや新しい事実を知りました。本当に西原先生はスゴイ!「医師なら今のうちに修得しておかないと」といってあげたい。

──下光博之

       
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歯はヒトの魂である

「二重言語国家・日本」の歴史

著者 石川九楊

吉本隆明さん

石川九楊の書史論は、わたしには想像していた書論の次元を遥かに超えるものであった。筆圧の分布、筆速の波、右上がりの心理など、およそ優れた書家の実作の経験と、それにたいするミッシェル・フーコーのいわゆる「主体性の配慮」なしには解析が不可能なところまで「三筆」や「三蹟」などの書字を論じながら日本の書史が分析されていた。自己の書字にたいする経験的な省察と心くばりを深めていなければ、ここまで他者の書の深層まで到達させることはできない。

わたしは日本で文芸批評以外にはできていないという偏見をもっていたが、石川九楊の書の批評と書史の記述は、この偏見を見事に破ってくれた。何よりもそのことは、わたしには驚嘆すべき出来事であった。

書評

「朝廷から武士への支配交代という従来の歴史では、さらりとしか語られてこなかった人間たちが、むくりと立ち上がってくる本。本書では、宋から亡命した、あるいは留学した禅僧集団が、当時の国際語漢語の使い手として、法律・外交・教育・日中貿易を担っていたという。単なる文化集団ではなかったのだ」

──朝日新聞

「ひさしぶりに凄い本に出合った。読みながら始終、動悸がしていた。珍しい体験である。……この壮大な二重言語国家の仮説は、具体的な書の分析を通しての実証的なものであり、説得力は抜群である」

──芹沢俊介、読売ウイークリー

「……漢と和の言語の二重性という視点に立って、著者はナショナリズムの起源の底が存外浅いことを指摘する。本居宣長は、文字としての「やまとことば」の起源を漢字到来以前と考えようとした。だがこの考え方は無理がある。唯一の日本文字である平仮名は漢字を基礎に万葉仮名を経て生まれたのであるから、著者はそう一蹴する。……」

──芹沢俊介、東京新聞

「……目のウロコはどっと落ちる。“書は人なり”が実感できる。一点一画が書いた人の中身を語ってしまう。おそろしいことでもある」

──藤森照信、京都新聞他多数

       
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「二重言語国家・日本」の歴史

脳は出会いで育つ

「脳科学と教育」入門

著書 小泉英明

養老孟司さん

小泉さんは私が尊敬する脳科学者である。その人が脳と教育というテーマに取り組むと知って、私はたいへん嬉しかった。それが大切だとだれでもわかっていて、なかなか本気でやる人がいなかったからである。この本を多くの人にぜひ熟読していただきたいと思っている。

書 評

本書に見られる幅広い視野と博識には、いったいこのような本が書ける人が他にいるだろうか、と思わずにはいられない。「脳科学と教育」についての定番というべき本になることであろう。

──加藤忠史(理化学研究所脳科学総合研究センター)、こころの科学

       
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脳は出会いで育つ

高齢者の喪失体験と再生

著者 竹中星郎

書評

「世界一の長寿国になった幸せな日本。しかし、一皮むくと、認知症や寝たきり状態への不安が渦巻いている。長寿を喜びながら、老いを敵視している。この不思議なねじれ現象。ここに鮮やかな切れ味のメスを入れたのが本書である。私も70代半ばを過ぎて認知症を恐れる一人になっていたが、本書と出合って救われた。うれしい本である。……せいせいしたのは、老いは、社会的にも老いたる当人からも肯定されるべき自然、と位置づけられたことによる。老いは敵ではなかった。パートナーであった」

──増田れい子・ジャーナリスト、中国新聞

「寝たきりや認知症になっても、その人の尊厳が尊重されてこそ、成熟した高齢社会である、との指摘は共感できる。……老いを「若さの喪失」ではなく、真正面から真摯に生きてこそ、豊かな生を全うできる。示唆に富んだ「生き方論」である」

──聖教新聞

       
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高齢者の喪失体験と再生