ポスト・デモクラシー

格差拡大の政策を生む政治構造

ポスト・デモクラシー

著者 コリン・クラウチ (英国ウォーリック大学教授)

監修者 山口二郎 (北海道大学教授)

訳者 近藤隆文

  • 2007年3月30日発売
  • 四六判・上製 224ページ
  • 定価 1,800円+税
  • ジャンル[政治]
  • ISBNコード 978-4-86228-014-5 C0031

平等主義はなぜ後退するのか

今日、西欧ではポスト・デモクラシーと呼ぶ体制が進行し、民主主義が衰退に向かっている。労働組合が弱体化し、企業の利益代表と政府の相互交渉によって政治が形成されて、権力と富の再分配政策はとても望めそうにない。少数の政治エリートが大衆の要求の管理と操作法を習得し、選挙は見世物的なゲームと化した。また公共サービスのブランド化。しらけた大衆は社会的上昇のため教育に異常な関心を示している。

本書は富裕者優遇政策を生む構造的力を解明し、企業の政治支配防止、政党の再生、新たなアイデンティティ形成など、その打開策を探る。格差拡大の政策が進む日本の政治状況にも大きな教訓となるヨーロッパ最新の思索。

「日本政治を読み解く上でも、本書は有益な視座を提供してくれる。とくに、新自由主義政策によって不利益をこうむるはずの弱者がなぜこれを支持するのかという大きな疑問が、本書のいくつかの概念を応用することによって解決されるように思う。」
――山口二郎 (北海道大学教授)

目次

  1. まえがき
  2. なぜポスト・デモクラシーか?
  3. グローバル企業――ポスト・デモクラシーの世界の鍵を握る制度
  4. ポスト・デモクラシーにおける社会階級
  5. ポスト・デモクラシー時代の政党
  6. ポスト・デモクラシーと商業化する市民権
  7. 結び――私たちはここからどこに向かうのか?

著作者について

コリン・クラウチ(Collin Crouch)

現在はイギリスのウォーリック大学ビジネススクールの教授を務める。イギリスを代表する経済社会学者。これまで、オックスフォード大学、ロンドン・スクール・エコノミクス、欧州大学院大学などで教育、研究を行ってきた。 知的関心の幅広い知識人として、現実政治にも深く関わる新しい社会民主主義者。

山口二郎(やまぐち・じろう)

1958年生まれ。東京大学法学部卒業後、同助手を経て、現在、北海道大学法学部教授。専攻、行政学。著書『大蔵官僚支配の終焉』『一党支配体制の崩壊』『危機の日本政治』( 以上、岩波書店)『日本政治の課題』『日本政治 再生の条件』『ブレア時代のイギリス』(以上、岩波新書)ほか。

近藤隆文(こんどう・たかふみ)

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒業。翻訳家。訳書『エブリシング・イズ・イルミネイティッド』(フォア著、ソニーマガジンズ)『セックス・イン・アメリカ』(ロバート・マイケル、ジョン・ガニョン、エドワード・ローマン、ジーナ・コラータ著)『バルサとレアル』(ポール著、以上、NHK出版)ほか多数。

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