「よい子」が人を殺す

   ~なぜ「家庭内殺人」「無差別殺人」が続発するのか

[よい子」が人を殺す

著者 尾木直樹

  • 2008年8月28日発売
  • 46版並製、245ページ
  • 定価 1,800円+税
  • ジャンル[社会・教育]
  • ISBN978-4-86228-024-4 C1036

なぜアキハバラ無差別殺傷事件が発生したのか

07年6月、学研新書として刊行され、発売10日で回収された『カプセル家族の危機』の大幅増補改訂版。今年になって起きた「アキハバラ事件」や無差別殺人事件を加筆。

先日の秋葉原通り魔事件のような、青少年による無差別殺人や家庭内殺人が続発している。犯人は、かつての非行少年ではなく、いずれも非行歴のない「よい子」、成績優秀だった若者というのが著しい特徴だ。
これらの原因はなにか。二極化する格差社会、「負け組」にならないよう、孤立したカプセル家族内の内圧が極限化した結果の親殺し、その怒りが社会に向かうと無差別殺人に至る。

これら若者殺人の背景、克服する道を、<格差社会><カプセル家族>や教育観・子ども観等の見直しのなかで考える。

目次

  序章  今、「よい子」に何が起きているのか
  ─続発する「家庭内殺人」「無差別殺人」の謎

  第一章 続発する「家庭内殺人」
  ─「よい子」が親を殺すとき
  はじめに
   1 奈良母子放火殺人事件─医学部をめざした高一男子の心は 
   2 妹殺人、断たれた夢─兄が妹を憎むとき
   3 一五歳少年、両親を「爆殺」─その心の闇は
   4 母親に毒物を投与する少女─生体実験の意味は
   5 エリート高三生、父への激しい憎しみ─絞殺させた悪のパワーは何か

  第二章 事件にみる「カプセル家族」
   ─バーチャル化・スパルタ化
  はじめに
    1 家族殺人を依頼する友人関係
    2 ひきこもり問題の一断面から─どう風穴をあけるのか
    3 佐世保事件に見る友達への殺意
    4 授業中の教室へ爆発物が─少年は何を投げ込みたかったのか?

  第三章 殺人はなぜ「家庭内化」するのか
  ─若者の家庭と学校生活の変化
   はじめに
    1 身辺化して生きる現代の若者たち
    2 変化した親子、家族関係
    3 家庭教育の現状
    4 ネット社会が変質させる人間関係
    5 二極化と新・学歴社会の到来

  第四章 「無差別殺人」始まる
   ─「家庭内殺人」から「無差別」化へ?
  はじめに
    1 高校二年生、五人刺傷─品川戸越銀座「通り魔事件」
    2 無差別、八人殺傷の恐怖─土浦荒川沖駅殺傷事件
    3 「無差別殺人」に駆り立てた情念─岡山ホーム突き落とし事件
    4 秋葉原無差別殺傷事件─“バーチャル劇場型”凶悪事件
    5 「無差別殺人」犯に共通する四つの特徴

  五章 子ども本位の子ども観めざして
  ─「家庭内殺人」「無差別殺人」脱出の道
  はじめに
    1 子どもの感性をゆさぶる大人のかかわり方
    2 家庭も学校も子ども参画をすすめ自尊感情を高める
  ─新しい「子ども観」
    3 「家庭内殺人」「無差別殺人」を防止するキャリアデザイン教育
  ─何のために学び、どう生きるのか

  終章  それでも家族は子どもの味方、家庭は居場所

著作者について

尾木直樹

尾木直樹(おぎ・なおき) 現在教育評論家、臨床教育研究所「虹」所長、法政大学キャリアデザイン学部教授、早稲田大学大学院客員教授。
1947年、滋賀県に生まれる。早稲田大学教育学部卒業後、海城高校、東京都公立中学校教師を経る。
著書『学校は再生できるか』(NHKブックス)『思春期の危機をどう見るか』『子どもの危機をどう見るか』(以上、岩波新書)『新・学歴社会がはじまる』『日本人はどこまでバカになるのか』(以上、青灯社) 『教師格差』(角川書店)ほか

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