万葉集百歌
万葉集の新しい入門書誕生
万葉集から百の名歌を選びなおし、最新の研究成果をふまえて新たに読み解き、鑑賞する。
万葉集は、「庶民の素朴な生活感情を素直に表現した歌集」ではないとして、まず、文学の発生や起源とのつながりで考える。また一方、当時の中国文学の影響による高度な表現の達成にも注目していく。
古代の人びとの考え方、感じ方にもとづいた読みをリードしてきた古橋氏と、歌の批評、鑑賞で定評のある森氏の絶妙のコンビで誕生する新しい万葉集案内。
『古今和歌集』以降、恋の歌は心変わりの歌を入れるようになる。そういう歌がほとんどないことからして、万葉集は青春の文学ではないかと思う。そういうなかで、この歌は突出している。万葉集の時代にも、当然のことながら、終末期の恋に苦しむ人がいたのだ。。
(「さし焼かむ 小屋の醜屋に かき棄てむ 破薦をしきて」より/古橋)。
秩序をもって成り立つ社会で無秩序な動物的欲望や、欲しいままに広がって行く恋情といったものは内に隠されていないと、秩序を破壊する。〈性〉は恐れられてけがれとも神聖とも見られ、少し距離を置いて見られた。神聖と見られると神との関係と似てきた。
(「ちはやぶる 神の斎垣も 越えぬべし」より/森)。
目次
はじめに
1 叙景
2 季節
3 旅
4 恋
5 鎮魂
6 人生
7 風流
8 物語
9 からかい
10 鄙
あとがき
著作者について
古橋信孝/森朝男
古橋信孝(ふるはし・のぶよし)現在、武蔵大学特任教授
1943年生まれ。東京大学大学院博士課程修了
著書『古代の恋愛生活』(NHKブックス) 『吉本ばななと俵万智』(筑摩書房)
『万葉歌の成立』(講談社学術文庫) 『平安京の都市生活と郊外』(吉川弘文館)
『物語文学の誕生』(角川叢書) 『誤読された万葉集』(新潮新書)ほか
森朝男(もり・あさお) 現在、フェリス女学院大学名誉教授
1940年生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了
著書『万葉集』(加藤中道館) 『古代和歌と祝祭』(有精堂出版)
『古代文学と時間』(新典社) 『古代和歌の成立』(勉誠社)
『恋と禁忌の古代文芸史』(若草書房)ほか