ナチと民族原理主義

ナチと民族原理主義

著者 クローディア・クーンズ(デューク大学教授)

訳者 滝川 義人

  • 2006年4月25日発売
  • A5判・上製 464ページ
  • 定価 3,800円+税
  • ジャンル[西洋史・政治学・民族問題]
  • ISBNコード 4-86228-005-6

あの惨劇はドイツ人の良心的行動からだった

多くのドイツ国民は、ユダヤ人排撃を黙認する道徳体系を信じた。その意識形成はいかにしてなされたのか。

従来言われたような、単なるナチの恐怖政治や宣伝のためではない。ヒトラーがユダヤ人について沈黙していた時期、民族の血統を信仰する民族原理主義に基づいて、異質の隣人を悪とする「崇高な」人種理論を、当時の学者や官僚など知的エリートたちがドイツ国民の間にひろめていった。そして殺人者たちは、ハンナ・アーレントの言うような単なる「歯車」ではなかった。

本書はその信仰形成のプロセスを、ぼう大な史料を駆使して解き明かすナチ研究の最前線。

民族原理主義は今日なお健在であるが、隣人愛を大罪とする「我われ」だけの共同体意識の惨劇を明るみに出す画期的労作。

目次

  • プロローグ 民族の血統を信仰する
    1. 民族原理主義へ
    2. フォルクに寄せる無限の信頼
    3. 学問ふうの反ユダヤ主義
    4. ひそかに進む日常生活の変容
    5. フォルクという血の大河
    6. 新しい教科書の登場
    7. 官僚たちの迫害手続き
    8. 大量虐殺を用意する学者たち
    9. 「隣人愛」という大罪
    10. 排除を受入れた国民

著作者について

クローディア・クーンズ

デューク大学 歴史学教授。専門分野は、人種主義、ジェノサイド、ジェンダー。著書“More Masculin Men.More Feminine Women.:Gender and Race in Nazi Popular Culture.” 『父の国の母たち』他
1987年度全米図書賞ファイナリスト他、多数の賞を受賞している。

滝川義人(たきがわ・よしと)

ユダヤ、中東研究者。メムリ(中東報道研究機関)日本代表。著書『ユダヤ解読のキーワード』他、訳書、ヴィストリヒ編『ナチス時代ドイツ人名事典』他

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