Loading...

      

Seitosha Publishing

2016年1月のエントリー 一覧

ストレンジカントリーサムネイル.jpg

著者:ヘミングウェイ
編者:金原 瑞人
978-4-86228-096-2 C0082
定価 1,200円+税 136ページ
ジャンル[英語読み物]
発売日 2016年1月27日


紹介
ヘミングウェイの死後初めて発表された中編ロードノヴェル。
中年作家ロジャーは若い恋人ヘレナを連れて旅に出る。
フロリダを起点に西へと車を走らせる彼らの会話と行動、ロジャーの内心描写で綴られた物語には、ヘミングウェイ自身の自伝的要素も多く含まれている。
・金原瑞人氏による詳しい解説と語注付きで辞書なしで読め、多読に最適。
・原作の全文を掲載

 

目次
まえがき(金原瑞人)
The Strange Coutry
あとがき(金原瑞人)

 

著者プロフィール
アーネスト・ヘミングウェイ Ernest Hemingway(著)
アメリカの詩人・小説家(1899-1961)。
イリノイ州オークパーク生まれ。高校卒業後新聞記者となる。第一次大戦やスペイン内乱での従軍経験をもとにした『武器よさらば』『誰がために鐘は鳴る』など、自身の実体験に取材した作品を多く残した。
長編小説『老人と海』が世界的ベストセラーとなる。1954年ノーベル文学賞受賞。簡素で力強い文体と冒険的なライフスタイルは20世紀のアメリカの象徴とみなされ、各方面に影響を与えた。

金原 瑞人(かねはら・みずひと)(編)
現在、法政大学教授、翻訳家。
ヤングアダルト小説はじめ海外文学の紹介、翻訳で著名。
著書『翻訳のさじかげん』(ポプラ社)ほか。
訳書『豚の死なない日』(ロバート・ニュートン・ペック、白水社)『青空のむこう』(アレックス・シアラー、求龍堂)『国のない男』(カート・ヴォネガット、NHK出版)『月と六ペンス』(サマセット・モーム、新潮文庫)ほか多数。

 

まえがき
1.この英語の注釈シリーズもこれで6冊目。
今回は前回のThe Snow of Kilimanjaro、The Short Life of Francis Macomberに引き続き、アーネスト・ヘミングウェイの中編、The Strange Countryを取り上げてみた。
これはヘミングウェイ死後、1987年に出版されたThe Complete Short Stories of Earnest Hemingwayの最後に収められている。注でも触れているが、『ヘミングウェイ大事典』(勉誠出版)によれば、『海流の中の島々』(1970年)、「ビミニ」編の初期原稿の一部にあたる。
前回の2作はアフリカにハンティングにやってきた夫婦の物語だったが、今回の作品は少し趣が違う。舞台はアメリカ。作家のロジャー・ハンコックは自分より14歳若いヘレナを連れて、フロリダを出発し、西へ西へと車を飛ばす。一種のロード・ノヴェルだ。
しかし作品の構成とテーマはThe Snow of KilimanjaroやThe Short Life of Francis Macomberにとてもよく似ている。最初から最後まで男と女の行動と会話と、主人公(男)の心理描写が続く。さらに、主人公がどことなくヘミングウェイと重なる。
2.前回も書いたが、「ヘミングウェイは難しい」。
最初から最後まで文章が難しというわけではない。たとえば、小気味よく会話が進んでいくところなどは簡潔で、比較的読みやすい。
たとえば、次のようなところだ。
"Do you want another glass of milk?"
"No thanks," Helena said. "Where are you from Marie?"
"Fort Meade," the waitress said. "It's right up the road."
"Do you like it here?"
"This is a bigger town. It's a step up I guess."
"Do you have any fun?"
"I always have fun when there's any time. Do you want anything more?" she asked Roger.
"No. We have to roll."
ところが、後半、地の文章なのか、ロジャーの独白なのかわからないような、ごちゃごちゃした、ときどき文法を無視したような部分は、じつに読みづらい。
しかし、異様な迫力で迫ってくる。
そのへんが、この作品のおもしろさだろう。まずは、あまり細かく考えないで、ざっと読んで、雰囲気と迫力を感じ取ってもらえればいいと思う。