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Seitosha Publishing

副題:手術や抗がん剤、放射線ではない画期的治療

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著者:永山悦子/協力:小林久隆

ISBN:978-4-86228-095-4 C0047

定価1200円+税 240ページ

発売日:2017年8月25日

 

紹介
オバマ米前大統領が年頭教書演説で紹介。
いよいよ日本で治験が始まる!
米国での治験結果、15人中7人の進行がんが消えた、


「光を当て、がん細胞だけを破壊する。がんの8~9割は治せるようになると思います。
副作用もほとんどありません。がんはもう怖くない、と患者の皆さんが言えるようにしたい」
――小林久隆(米国立衛生研究所主任研究員)

● 米国で画期的ながん治療法を開発する日本人研究者・小林久隆さん。
● がん細胞に結びつき、近赤外光を当てると細胞を破壊する薬剤を開発。
● 薬が起こす「物理化学的」な作用で狙ったがん細胞だけを破壊する。
● 治療によって免疫活動が活性化、がんを消滅させる。
● 動物実験では、がんを守る免疫細胞を攻撃することで、全身の転移がんも消えた。
● 従来の手術・抗がん剤・放射線と違い、副作用はほとんどない。
● 外来治療で入院不要。治療費は安くできると想定。
● 最初の治験で、進行がん患者7人のうち4人のがんが消滅した。


 

目次
I 光免疫療法とはどんな治療法か
II 最初の治験の結果をみる──進行がん7人中4人のがんが消える
III これまでのがん治療法の有効性
IV 光免疫療法の開発物語
V 途方に暮れるがん患者たち
VI 小林久隆「光免疫療法」の今後を語る(聞き手/永山悦子)

 

著者プロフィール
永山 悦子  (ながやま・えつこ)(著)
1968年東京都生まれ。
1991年慶應義塾大法学部法律学科卒、毎日新聞社入社。
2002~2016年科学環境部。その間、がん、生活習慣病、再生医療、生命倫理などを主に担当。
2016年4月から1年間、医療福祉部副部長。がん対策基本法成立10年を検証する長期連載を担当する。
2017年4月より編集編成局編集委員。
2013~2015年厚生労働省がん対策推進協議会委員を務めた。
共著に『がんに負けない』(毎日新聞社)、『「理系」という生き方 理系白書2』
『迫るアジア どうする日本の研究者 理系白書3』(いずれも講談社文庫)など。

小林 久隆(こばやし・ひさたか)(協力)
1961年兵庫県西宮市生まれ。
1987年京都大医学部卒。
放射線科医として国立京都病院(現・京都医療センター)で放射線の診断と治療、内視鏡、病理などの臨床を経験する。
1995年京都大大学院を修了。医学博士。米国立衛生研究所(NIH)臨床センターフェロー。
2001年NIH・米国立がん研究所(NCI)シニアフェロー。
2004年からNIH・NCI分子イメージングプログラム主任研究員。
2014年NIH長官賞受賞。光免疫療法の研究開発により4回のNIH Tech Transfer Awardを受賞。
第38回日本核医学賞受賞。

 

はじめに
薬を注射し、がんのある場所に光を当てるだけで、がんが治る──。そんな画期的ながん治療法の実用化に向けた動きが加速している。

国民の2人の1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ日本。医学の進歩によって、がんは「不治の病」から「治る病」になってきた。しかし、いまだにさまざまな治療に挑戦しながら、志半ばで世を去る人は少なくない。そのような患者たちにとって、がん細胞は手強い難敵であり、絶望的な気持ちでがんと向き合うことになる。だから、今は治せないがんを、いかに治せるようにするかが、がん治療研究の核心となる。

「光免疫療法」と呼ばれる画期的ながん治療法を開発したのは、米国立衛生研究所(NIH、National Institutes of Health)主任研究員の小林久隆さん(55)だ。若い頃から放射線科医としてがん治療に携わる中で、力尽きる患者を多く見てきた。「がんはもう怖くない、と患者の皆さんが言えるようにしたい」。そんな夢を20年以上かけて追い求めてきた。

従来のがん治療の手術、放射線、抗がん剤治療では副作用を避けられない。そこで、小林さんはがん細胞だけをピンポイントで攻撃し、周囲の正常な細胞には影響を与えない治療法を開発することを目標に据えた。そして、がん細胞の性質や特徴をとことんまで突きつめ、がん細胞の細胞膜を近赤外光を当てることで破壊し、がん細胞を確実に殺す新手法を発明した。マウスの実験でがんがなくなる高い効果が確認され、2015年に米国で始まった実際のがん患者を対象にした治験でも「想定通り」(小林さん)の結果が出始めているという。これまでの治療では治らなかったがんに効果がある可能性が高まっているのだ。

小林さんが学会などの発表で使うスライドを見ると、患者のがんが、短期間でみるみるなくなっていく過程が分かる。その様子は「これまでに誰も見たことがない」(小林さん)がんの死に方だという。痛みも副作用もほとんどなく、受けた患者は「また受けても良い」と話すほどだ。

私が小林さんに初めて出会ったのは2007年。それ以降、小林さんの研究を継続して取材してきた。以前から、がんの新たな治療開発を目指す医学研究は取材していたが、小林さんの研究はそれらと一味も二味も違った。「本当にヒトでも使えるのだろうか」と疑問に感じる研究も多い中、小林さんの研究は方向性が明確で、戦略的だった。説明も論理的で、何よりも分かりやすかった。最初に取材したのは、がん細胞だけを光らせる手法の開発。続いて、がん細胞をピンポイントで攻撃する治療法、最近は実用化に向けた取り組みへと広がっている。医学研究では、動物実験レベルの基礎研究の成果を患者が使えるようにする実用化に苦労することが多いが、小林さんの場合は、驚くほど順調に進んでいる。さらに、がん治療という医療分野の視点に加え、新たな科学を切り開く面白さにもあふれている。

本書は、小林さんのゴールを見据えた緻密な戦略や、医学・化学・物理学など多分野融合の醍醐味、偶然から見つかった「切り札」など、光免疫療法発明のドラマチックな現場と、米国で進む治験の最新情報を紹介する。小林さんへのインタビューでは、光免疫療法の治療対象となるがんの種類、治療費用、日本での治験実施の見通しなど、がん患者の皆さんの誰もが知りたいテーマや、日本ではなく米国で研究を続けている理由などを聞いた。

世界中のがん患者が、小林さんの研究の進展を心待ちにしている。2017年6月には自らの乳がんの闘病を発信し続けたフリーアナウンサーの小林麻央さんが、34歳の若さで亡くなった。彼女のように志半ばで世を去らねばならない患者の皆さんの期待はなおさらのことだろう。

「がんはもう怖い病気ではない」。小林さんの研究をきっかけに、そう言える時代が夢物語ではなくなりつつあるのかもしれない。その時代への扉を開いてみようと思う。

 

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