What Genes Dan't Do
著者:レニー・モス
訳者:長野 敬、赤松眞紀
ISBN:978-4-86228-019-0 C1045
定価3,800円+税 347ページ
ジャンル[生物学]
発売日:2008年2月1日
紹介
「遺伝子の世紀」を展望し、遺伝子観の見直しを迫る意欲作!
21世紀に入ってのバイオテクノロジーの発展はすさまじく、遺伝子についての研究成果(ヒトゲノム)が株式市場の巨額の資金を動かすまでになった。
しかし本書の著者は、遺伝子のみが生命体を形づくる唯一の源ではない、と強調する。
遺伝子の突然変異と直腸がんの関わりは、15%しか突き止められていない。特定の病気や一般に生命体の秩序は、遺伝子ですべてが決定されるわけではなく、そのつど臨機応変の細胞や細胞同士の行動によって形づくられるという。
細胞内の働きなど最新の分子生物学の成果をもとに、遺伝子やゲノムについての通念を根底から覆す最前線の考察。
目次
はじめに
第一章 遺伝子の起源
第二章 修辞法レトリックの生命と生命の修辞法
第三章 遺伝子には何ができないか
第四章 癌と遺伝――過程としての正常と異常
第五章遺伝子の後に
著者プロフィール
レニー・モス Lenny Moss(著)
1952年生まれ。
現在、エクスター大学教授、同大学ゲノムESRCセンターシニアフェロー。
生化学(カリフォルニア大学バークレー校)と哲学(ノースウェスタン大学)で博士号を取得。
長野 敬(ながの・けい)(訳)
生物学者、河合文化教育研究所主任研究員。
著書、『進化のらせん階段』(青土社)『生命の起源論争』(講談社)他
赤松眞紀(あかまつ・まき)(訳)
翻訳家。
共訳書『無脊椎動物の驚異』『ちょっと気持ち悪い動物とのつきあい方』(以上、R.コニフ著)『遺伝子の新世紀』(E.F.ケラー著)(以上、青土社)
まえがきより
本書の表題『遺伝子には何ができないか』は、哲学者ドレイファスの『コンピュータには何ができないか』を連想しつつ選ばれた。癌の原因が遺伝子の障害にあるという言い方は、コンピュータの不調の原因がシリコンチップの故障にあるというのと同様に、本質に迫らない。
著者は現代の遺伝子観を、遺伝子Dと遺伝子Pのつぎはぎ合成として鋭く衝き、特に癌の問題を「生命の技術的哲学」の立場から見直している。
著者モスが遺伝子DNAの情報的資源に加えて、細胞の動態や遺伝子産物の後成的な修飾を、同等の資格をもつ資源と見る立場は、単なる外野からの遺伝子還元論批判というのを超えて、これからの研究の主流にとっても示唆に富む提言となるだろう。